「馬の気持ちなんてわかるわけないじゃないですか!だって馬ですよ?」…2020年、もう1頭の(幻の)年度代表馬候補誕生。

 強いことは初めからわかっていたが、あの勝ち方はもはや「引く」レベル。

 

 昨日のマイルチャンピオンシップ単勝1.6倍の圧倒的人気を受けた4歳牝馬グランアレグリア号が人気に応え優勝、今年の混合短距離G1競走の内3月の高松宮記念を除いた3競走を制し、名実ともに日本短距離界のチャンピオンとなりました。

 

 事実だけを書けばこれだけあっさりした内容になってしまうんだけど、レース内容がまぁとんでもない。2着福永祐一騎乗のインディチャンプは昨年の春秋マイル覇者、3着川田将雅騎乗のアドマイヤマーズは昨年の香港マイル覇者、かつグランアレグリアに2度先着した実績あり。つまり日本国内はおろか世界的な強豪であると言っても過言ではない両馬が完璧なレース運びをしたにもかかわらず負かされてしまったのだから。

 

 道中の位置取りはアドマイヤマーズが前目、その後ろにグランアレグリア、それを見るような形でインディチャンプ。残り600メートル付近でインディチャンプが進出を開始、外からグランアレグリアを交わしてアドマイヤマーズと併せ馬の態勢に持ち込みます。直線半ばの時点でグランアレグリアの前は先の2頭、内は失速したラウダシオンに塞がれる形となりもはやこれまでと思わされましたが…

 

 残り200メートルで外に進路を取り、ルメール騎手がようやく鞭を入れるとあっという間に両馬を抜き去りゴールイン。着差は1馬身弱でしたが、残り100メートル強までは逆に1馬身後ろにいたことを考えれば実に恐ろしい圧勝劇と言っても過言ではないでしょう。安田記念でアーモンドアイを圧倒し、スプリンターズステークスで4コーナー15番手から2馬身突き抜けてしまう脚力には改めて脱帽です。アーモンドアイが引退した来年はこの馬が中心となって競馬界が動いていくことになるのでしょうか?2000メートル級のレースにも参戦していくという話もあり、楽しみですね。

 

 一方やや対照的な結果となってしまったのが「世代ナンバーツー」と見込まれていた3歳勢の2頭。2番人気サリオスは5着、4番人気レシステンシアは8着と共にキャリアで初めて馬券に絡めないレースとなりました。

 

 サリオスは大外枠という条件もあり、デムーロ騎手は後方から追い込む作戦を選びました。レース後ファンやメディアから一斉に批判を浴びることとなった戦法ですが、個人的には「どうしようもなく悪い騎乗」だったとは思いません。もちろん4.1倍の支持を集めた馬が他力本願の消極的なレースをしたことに対する不満はあります。しかし大外枠から前を主張したり、内を突いて馬群を割ってくるような戦い方はひとつ間違えれば大敗のリスクをはらんでいますし、キャリアの少ない3歳馬にとって大きな負担となることも考慮しなければいけません。

 

 レースの流れに乗れず、勝負に参加出来なかったということを除けばサリオスは他馬のストレスもなく、終始馬場のいいところを通ることが出来ました。その結果が上がり3ハロン33.1秒の5着だったというだけで、サリオスという馬が持っている現状の力自体はある程度示すことが出来たと思います。とにかく「無敗の3冠馬コントレイルの2着」という実態とは別のところで評価ばかりが高くなり過ぎていたところもあり、今後は距離適性も含めて冷静な見方をしてあげた方がいいのではないでしょうか?(はっきり言えば、この馬にとってマイルは忙しすぎると思います。1800~2200あたりが合っているように見えますが…)

 

 レシステンシアは骨折の影響もありNHKマイルカップからの直行、かつ+24キロという体重増からも臨戦態勢が整っていたとは言えない状態だったのでしょう。その割には人気になってしまいましたね、一時はインディチャンプより単勝が売れていましたから。こちらも北村友一騎手の消極的なスローの溜め逃げ戦法がやや批判の的となっていましたが、思い切った逃げを打つには状態面で自信が持てなかったというのが正しいような気がします。それを含めれば0.8秒差の8着という結果もそこまで悲観する必要はないと思いますけどね。

 

 この結果がジャパンカップの人気に多少なりとも影響してくるかもしれませんが「3頭の3冠馬」対決が楽しみなことに変わりはありません。最後に、例年なら来月の香港国際競走に出走して、仮に勝利すれば年度代表馬の有力候補に挙げられていた筈のグランアレグリア号。色々あって今年は票が入る見込みはなくなってしまいましたが、それはまぁ仕方ありません。来年のご活躍を切に願っております(ウルトラCとして有馬記念に出走して勝利するという手段もありますが、来年がある身ですからねww)。

 

 かしこ。