「馬の気持ちなんてわかるわけないじゃないですか!だって馬ですよ?」…2020年菊花賞が終わって。

 「う~む、勝つには勝ったけど…微妙だな!」

 

 今年のクラシック戦線もついに終わりました。菊花賞は無敗で皐月賞・ダービーの2冠を制したコントレイルが単勝1.1倍の圧倒的人気に応え優勝、史上8頭目のクラシック3冠を父ディープインパクトと同じく無敗で達成しました…とまぁ、「結果だけ書けば」それはそれで大変素晴らしいレースであったことは間違いありません。鞍上の福永騎手にも大変なプレッシャーがかかっていたことは想像するまでもないでしょうが、何はともあれ「勝利」という結果を出すことが出来たこと自体は(繰り返しになりますが)素晴らしかったと思いますよ。

 

 ただねぇ…実際のレース内容がどうだったかというと…どこまで行っても「微妙」という言葉しか自分の中からは生まれてこないかな。間違いの無いように言葉を付け足すとしたら、これがG1初制覇だったとしたら何も言うことは無いんですよ。あくまで「3冠馬の勝ち方としては微妙」っていうだけで。競馬界最高峰の肩書を背負う立場となった以上、今後の比較対象が先輩の3冠馬たち(特に親父さん)となってしまうのは仕方がないというか、むしろ当たり前のことだと思うので。

 

 レース自体は予想通りキメラヴェリテが引っ張る形となったけど、1000メートル通過が1分2秒2、2000メートル通過が2分4秒8。てっきりハイペースの逃げに持ち込むものと思い込んでいただけに、この通過タイムは意表をつかれました。良馬場とはいえ芝の痛みが目立ち、ヴァルコス以外の全馬が外を回るような時間のかかる馬場。それを考慮しても「やや若しくは並みのスローペース」という数字。

 

 この緩い流れの中、コントレイルは決して折り合いが綺麗についたとは言えませんでした。前は「チーム・コントレイル」の重要なアシスタントであるディープボンドに守ってもらえましたが、斜め後ろをルメール騎手騎乗のアリストテレスに押さえられ終始プレッシャーを受け続ける展開。頭を持ちあげるそぶりを見せてはいましたが、ギリギリのところで持ちこたえたというところでしょうか。

 

 「やっぱりスローペース向いていない馬なんだな、陣営がペースメーカーつけたがるのも頷けるわ。それにしてもチームの一員であるキメラヴェリテがこんな溜め逃げするなんて、作戦ミスなんちゃうか?」

 

 こんな考えが頭をよぎりましたが、キメラヴェリテ自身にとってはこのペースでも相当厳しかったようです。3~4コーナーあたりで脚色が一杯になってしまい後退、代わって番手を追走していたバビットが先頭に立ち直線に入ります。そのバビットも持ちこたえることは出来ず、4番手グループにつけていたコントレイルとアリストテレスに交わされ、直線の残り半分はこの2頭の壮絶なたたき合いが見どころに。一瞬外のアリストテレスが前に出かかったようにも見えましたが、何とか踏みとどまったコントレイルがクビ差前に出たところでゴールイン。離された3着は後方から追い込んだサトノフラック、続いてディープボンド、ブラックホールという掲示板となりました。

 

 上位人気勢では2番人気ヴェルトライゼンデが7着、3番人気バビットが10着。ヴェルトライゼンデは着順もそうですが、見せ場すら作ることが出来なかったのは残念です。個人的に池添騎手には「稀代のマーク師」として何かやってくれるだろうと期待していただけに、選んだ戦法が前走神戸新聞杯と同じく「離れたところからの追走」だったのはいかにも寂しい。枠順的にもアリストテレスのポジションを取ろうと思えば取れたはずなのですが…人気ほどの実力は備わっていないというのが現実なのでしょうか。バビットは戦績が示す通り「単騎逃げ」に持ち込んでナンボということなのでしょう。キメラヴェリテ出走でそれが叶わぬ望みとなってしまった段階で苦戦は必至だったのかもしれません。でもそこまで悲観的になるような内容でもなかったので、今後自分の適性に合った舞台なら古馬になっても充分戦っていけるような気がします。

 

 2着のアリストテレスは前走「古馬混合の2勝クラス」を勝ち上がって来た「上がり馬」。今週もやっぱり馬券になりましたね、しかしまさか僅差の2着とは…ただ数字的な根拠はありました。勝ち上がったレースは神戸新聞杯の1週前とはいえ同距離、そこで2分11秒9という遥かに速い走破時計を叩き出していたわけですから。連対を外したのも1度だけと高い安定度を誇り、春の実績馬を差し置いて4番人気に支持されたのも宜なるかな

 

 とはいえ、レース前の時点ではあくまで3勝クラスの条件馬。無敗で2冠を獲得した馬とは「格」の上で天と地ほどの差があります。メディアやネット上では「名勝負」と讃える声が多いように見受けられますが、本来名勝負になんかなっちゃいけないんです。そもそもの立場がまるで違うんですから。それを一切合切無視して、大健闘したアリストテレスを褒め称えるのと同じようにコントレイルも褒め称えるってのは、それは「贔屓の引き倒し」ですよ。最低でも2馬身差はつけてくれないと、名目と実態が伴った結果とはとても言い切れない。

 

 まぁ兎にも角にも、コントレイルはこれから「無敗の3冠馬」という巨大な勲章を背負って走り続ける運命となった訳だ。関係者にとってはめでたいことこの上ないことだろうが、馬自身の立場を考えるとしたら、今日までのレースぶりを見る限りでは正直荷が重すぎるようにしか思えないのだが…次走は(恐らくジャパンカップだろう)真価が問われる一戦。レース間隔が詰まっているだけに無事に調整出来ることを祈る。

(ただシンボリルドルフディープインパクトも、対古馬初戦はいずれも2着に敗れているんだよな。敗戦経験のあったナリタブライアンオルフェーヴルは勝ったけど。そこらへんは面白い現象やね)

 

 さてさて、明日はいよいよプロ野球界年に一度のお祭り「ドラフト会議」である。シーズンどれだけ低迷していたとしても、この日だけは100%ポジティブに迎えられる大切な一日である。我らがファイターズの未来は、明日にかかっているのである。

 

 かしこ。