「馬の気持ちなんてわかるわけないじゃないですか!だって馬ですよ?」…2020年菊花賞前日。

 さて、菊花賞となったわけやが。

 

 先週の秋華賞、デアリングタクトが「粛々と」無敗の牝馬3冠を達成。

 

 じゃあ今週も続いてコントレイルが「粛々と」無敗の3冠達成…というのが戦前の圧倒的な下馬評。これを書いている時点のオッズもコントレイル単勝1.1倍、以下二桁倍率がズラッと並び、10番人気以下は単勝万馬券という極み付きの一本かぶり。秋華賞のデアリングタクト1.4倍、リアアメリア6.7倍というオッズと比べても支持率の突出ぶり。ここまでは父ディープインパクトとほぼ同じような流れで来ているが、さて結果はどうなりますかね?

 

 結論を先に書けば、自分はコントレイルに絶対の信頼は置いておりません。もちろん勝つ確率が一番高い馬であることは疑いようもありませんが、先週のデアリングタクトが「10回走って1敗するかしないか」だったのに対しコントレイルは「10回走ったら3敗くらいはしそうかな」この程度の差ですけどね。

 

 コントレイルにとっての未知数な部分を挙げると

 

①未対戦の「上がり馬」が結構そろっていること

②(ほぼ全ての馬に当てはまる普遍的な課題だが)京都芝3000メートルの特殊性

 

重箱の隅をつつけばもっと出てくるけど、大きなポイントはこのふたつでしょうか。

 

 ①に関しては何と言っても4月に未勝利戦を勝ち上がってから4連勝でセントライト記念を逃げ切ったバビットですね。前々走のラジオNIKKEI賞は完全に人気の盲点的な存在でしたが、セントライト記念では春のトライアル重賞勝利馬2頭を退けての見事な逃げ切り。「他馬の目標にされる」代わりに「自分でレースを作ることが出来る」という逃げ脚質のメリットの大きさを再確認しましたね。

 

 セントライト記念が終わった時には「バビットがペースを思いっきり落として、残り1000メートルあたりからじわじわスパート駆ける展開になったらコントレイル以外の馬が台頭して来てもおかしくないんじゃないのか?バビット自身は馬券内に残れないかもしれないけど…」そんな可能性もあるかなと思いましたが、そこは「チーム・コントレイル」、ちゃんと対策を立ててきましたね。

 

 キメラヴェリテ、菊花賞出走。

 

 正直「そこまでするか?」と思いますが、当事者にとっては「そこまでしても勝ちたい」ということなんでしょうね。実際にこれまで「そのやり方」で連勝を積み重ねてきたわけですから、無敗の3冠が掛かった大一番でやめる訳にもいかないんでしょう。

 

 スタート~直線入り口までにバビットが先頭に立ち、ペースを落とそうとしたところに外からキメラヴェリテが追って追って半ば無理矢理にでも並びかけるか、あるいは先頭を奪ってハイペースでレースを引っ張る…そんな光景が思い浮かびます。

 

 これまでコントレイルが出走した2000メートル以上のレースは(馬場条件など程度の差は多少ありますが)おおむね1ハロン12秒⇒1000メートル1分のペースで流れているんですね。この「遅すぎず、速すぎず」の展開を作り出しているのが「チーム・コントレイル」が用意しているペースメーカーによるものであることは半ば「公然の秘密」的なところもありますが、それが今回は皐月賞を担当したキメラヴェリテが務めるということなんでしょう。

 

 バビットが「番手でもOK」という馬なら問題ないのでしょうが、今までのレースぶりを見る限りではかなり神経質なところがありそうです。競り掛けられたときにも動ぜず自分のリズムを守ることが出来れば上位に食い込めるのでしょうが、現実的にはかなり難しそうです。でも「チーム・コントレイル」がペースメーカーを必要とするほどスローペースを嫌がるというのも、陣営がそこに弱点があることを自覚しているのかもしれません。それが折り合いに起因するものなのか、直線だけの瞬発力勝負に不安があるのかはわかりませんけど。

 

 今年は面白いことに、バビットのようなわかりやすい上がり馬のほかにも「古馬混合の2勝クラスを勝ち上がって来た」盲点になりやすい上がり馬が結構そろっているんですよね。この基準は秋華賞時にも挙げさせていただいて、結果牝馬限定戦とはいえ2勝クラスを勝ってきたソフトフルートが3着に食い込んだわけです。数年前に降級制度が廃止された関係で3歳馬の条件戦勝利のハードルが下がったとはいえ、秋華賞菊花賞に関して言えば今でも馬券内に入る資格としては充分なのでしょう。そしてその該当馬のほとんどはコントレイルと未対戦、どういう化学反応が起きるか楽しみな部分です。

(唯一対戦したターキッシュパレスが神戸新聞杯で0.6秒差の5着、この数字をどう見るか?)

 

 ②に関しては、距離の向き不向きに関しては正直やってみないとわかりません。ただ(天皇賞春も含め)勝つためのポジショニングとして「4角5番手」近辺が要求される舞台であることは間違いありません。コントレイル自身はおおむね前目でレースを運ぶ馬なのでスムーズにいけば問題はないはずですが、コーナーを6回もまわる過程で福永騎手がどれだけロスを少なく出来るかが注目です。元オリックスバファローズ監督の森脇浩司さんの著書「微差は大差」、菊花賞はこの言葉が凄く良く当てはまるんですよ。

 

 色々書いてはみたものの、スムーズに走れればコントレイルが差されるということはなかなか考えにくいです。「チーム・コントレイル」としてリスク回避のための手立ても充分打ってくるはず。でもそれがうまくいかなかったら?その時は神戸新聞杯で完全に「脚を測りに行く」レースをしたヴェルトライゼンデと池添騎手が今までの雪辱を晴らすかもしれません。90年代の的場騎手もそうでしたが、池添騎手も「相手を1頭に絞った」時は非常に怖い。どうなりますやら、明日が楽しみですな。

 

 かしこ。