「あまりにも順調に勝ちすぎているボクサーは、実は弱い。」…ロマチェンコVSロペス戦の雑感等々。

 今更だが、18日に行われたボクシング「ワシル・ロマチェンコVSテオフィモ・ロペス戦」について少し考えてみる。

 

 本ブログでは今まで野球と競馬の話題ばかり取り上げてきたが、ボクシングも割と好きなスポーツ。「格闘技」の枠内でくくるなら一番好きかもしれない。別に専門誌や有料チャンネルを購入するほどではないけど、面白そうな試合や選手が出てきたら調べてみようかな?と思う程度だけど。

 

 ひとえに「格闘技」と言っても今はジャンルが随分と細分化されちゃってて、最新の動向を追い続けるのは正直しんどい。15年くらい前までは

「立ち技のK-1」「総合格闘技のPRIDE」

という、名実ともに世界最高峰の舞台が日本国内に2つもあった。完全に年寄りの愚痴でしかないけど、あの頃は楽しかったな。まだUFCがメジャーになる前、ボクシング以外のプロ格闘技で大金を稼げるリングが日本にしかなくってさ。世界各地の訳のわからない背景を抱えた選手たちが「ジャパニーズ・ドリーム」を目指して集まって、良くも悪くも滅茶苦茶な興業や試合をして、それに格闘技ファンがいちいち熱狂したりして…いろいろあって、今は両方ともなくなってしまったんだけどね。あの時代は本当に「夢」みたいなものだったのかもしれませんね。

 

 話がそれた。今年に入ってタイトルマッチなど主要な試合が軒並み中止、延期の憂き目に遭い続けて来たボクシング業界。それが先月あたりになってようやく本格的な興業が(制限付きではあるものの)再開されるようになってきた。9月27日の「プレミア・ボクシング・チャンピオンシップ(PBC)」興行であったり、今月の「トップランク」興行であったり。

 

 PBCが1日に6試合を集中させたのに対してトップランクがほぼ1週間の間隔で試合を分散させたというのもなかなか面白い対比ですが、最大の注目カードと目されていたのが18日の「ワシル・ロマチェンコVSテオフィモ・ロペス」ライト級4団体王座統一戦。オリンピック2大会連続金メダリスト、かつパウンド・フォー・パウンド(PFP)現役No.1のロマチェンコが23歳の新鋭ロペスを迎え撃つという構図でしたが、下馬評は「キャリア、経験、技術に勝るロマチェンコがロペスを完封する」という意見がほとんどだったように思います。

 

 しかし、結果は3-0の判定でロペスが勝利。

 

 自分はこの日外出先で試合結果を知りましたが、第一の感想は

 

 「あぁロマチェンコ負けたのか、仕方ないかな」これだけです。

 

 前評判のあまりの高さからスポーツメディア上では「番狂わせ」の文字が溢れましたが、結果自体にさほど驚きはありませんでしたね(ジャッジ1名の「119-109」は流石にびっくりしましたが)。

 

 とにかくこの試合は、ロマチェンコに対してマイナス材料が揃い過ぎていましたからね。確かにフェザー~スーパーフェザー級までのロマチェンコは圧倒的なパフォーマンスを見せつけていましたが、ライト級に上げてからの4戦は勝ちはしたものの対戦相手を圧倒出来たというわけでもなく。その相手達も自身と同じく下の階級から上げて来た選手か、ライト級出身でも明確に格下という選手。「ナチュラルなライト級の強豪か、上の階級から下げて来た選手と対戦したら力負けするかもしれない」…一部で指摘されていたことですが、この条件にロペスはぴったりでしたからね。

 

 相手関係もさることながら、自身のプロとしてのキャリアもデビュー7年間でたったの16戦目という少なさ。そして1年2カ月ぶりという空き過ぎた試合間隔。しばしば「これ以上階級を上げるつもりはない、将来的にはスーパーフェザー級に戻りたい」という趣旨の発言も出るほど低かった、ライト級維持に対するモチベーションのそもそもの低さ。実態としての「綻び」の兆しは随所に現れていたはずですが…

 

 さて肝心要の試合内容。試合直後、一部のメディアからは「疑惑の判定」という文言まで飛び出していたので正直期待しながら動画を確認しましたが、まぁ悪い意味で裏切られましたね。前半~中盤にかけてのロマチェンコのあまりの消極さ!片やロペスの上下の打ち分け、特にボディブローが巧みで非常に有効的だったように映ります。後半にロマチェンコが持ち味を発揮しつつもとらえきれず試合終了。(あくまで私見ですが)自分の採点は116-112でロペス勝利(ロペス1~7、12R/ロマチェンコ8~11R)でした。これはジャッジ1名と全く同じ採点だったようですね。

 

 判定ってのは一応の基準はあれど最終的には個人の主観に委ねられる世界なので、ロマチェンコの戦い方を評価する方がいらっしゃっても不思議ではありません。ジャブを重視してボディブローを軽視するというのも、それはそれで見解のひとつでしょう。それにしても、だ。仮にも現役ナンバーワンの評価貰ってるボクサーがあんな戦い方をして、試合後「自分が勝っていた、後半は優位だった」と言われてもねぇ(その後、試合前に右肩を故障していたこと、手術を受けたことが明らかになったとはいえ)。

 

 だらだら書きすぎたので、今日のところは最後にひとことだけ。

 

 「パウンド・フォー・パウンドのナンバーワンってのも、当てになんねえなあ!」

 

 かしこ。