「ストレートは大胆に、変化球は低めに。」…続・2020年ドラフト会議について。

 昨日「中京大中京の高橋君がプロ志望届提出か、いや~びっくりしたね!でもこんなご時世だし、また大きな動きが続くかもわからんよね?」

 

 おおむねこのような内容の文章を書いた記憶があるのだが、そしたら今朝のスポーツニュースだよ。

 

 東海大の山崎伊織プロ志望届提出。

 

 いやいやいやいやそれはそれはそれは…確かに大学4年間で叩き出した実績は文句なし。東海大が圧倒的な力を持っているとはいえ、日体大桜美林大など自力のある大学がひしめき合う首都大学野球リーグにおいて通算11勝1敗、防御率1.09。奪三振数が少なめではあるものの、まさしく「圧倒的」な活躍をした逸材であることは論をまたない。今年の春先段階では「大学生ナンバーワン投手」と評価する関係者も多く、ドラフトでも強豪は必至と謳われていたわけだ。

 

 ところが6月、抱えていた右肘の不安が顕在化するに至りトミージョン手術に踏み切ることとなる。当然リハビリ期間を考えると2シーズンは戦力になれないかもしれない。よって今年のプロ入りは諦めて社会人野球入りし、体調を万全にして再来年のドラフトに賭ける…このようなシナリオがとっくに出来上がっていた、はずだったのだ。

 

 それがまさかの一転攻勢である。自分は初報を読んだときに思ったのが「これは順位縛りがかかっていそうだな」ということだった。故障持ちの自分を受け入れて内定を出してくれた企業への義理もあるし、それなりに上位の指名でなければ予定通り社会人野球のつもりだろうと。しかし続報によると「育成枠でも構わない」との文言。つまり「順位縛り無し」という、良すぎるくらいの思い切りの良さ。

 

 競合ドラ1クラスが、内定先の立場や体裁などお構いなしに順位縛り無しでプロ入りする。昨日の高橋のように「受験に落ちたからプロ野球にします」のようなシンプルな話ではない。自分は野球の競技経験など皆無だし関係者でも何でもない唯の1傍観者に過ぎないが、この現象が旧来の常識ではありえないことくらいは察することは出来る。

 

 ここから先は自分の憶測に過ぎないが、例えば山崎の受け入れ先だった企業がこのコロナ不況のあおりを受けて野球部の強化費を大幅削減する流れとなっていたとしたら?

ー2年間丸々チームの戦力として計算することの出来ない投手をリハビリさせるためだけに雇い続けるほどの余裕はなくなってしまったー

 ただでさえ社会人野球界は廃部や活動休止、クラブチーム化など縮小化が続いてきた、追い打ちをかけるようにコロナ不況だ。このような状況の激変がアマチュア球界全体に起きている可能性もあるのではないか?何の確たる情報も根拠もないが、そんな予感めいた考えが自分の頭をよぎったのだ。

 

 それはそれとして、本来競合クラスの逸材がドラフト下位でも指名可能になったということはプロ球団にとって非常に興味深い事態であることは間違いないだろう。右肘などを中心とした体全体のリハビリや投球フォームの抜本的見直し。実戦復帰には2年、本格的に1軍の戦力になるまでは3年かかるかもわからない。それだけ根気強く待ち続けられる余裕と「モノにさせられる」自信がある球団は勝負してみたくなるだろう。

 

 選手の人生がかかっている重大さはよ~く承知しているけど、それでも非常に「面白い」流れが今年のドラフトでは続いている。はてさて、この先どうなることやら…

 

 かしこ。