「あまりにも順調に勝ちすぎているボクサーは、実は弱い。」…2020年11月1日、ついに破られた2つの「ジンクス」。(編集)

 「まぁ、結局はただの杞憂に過ぎなかったっちゅうこっちゃね。」

 

 当日Twitterにも書いたことですが、日本のボクシング界並びに競馬界には長らく破られることの無かった2つの大記録がありました。それが

 

①「ボクシング世界戦14連勝」(1980年に具志堅用高が達成)

②「芝G1競走7勝」(1985年にシンボリルドルフ号が達成)

 

 であります。以降、数名の選手や数頭の名馬がこの偉業更新に挑んできたわけですが、えてして並ぶとか、もう少しで手が届きそうなところに辿り着くというところで敗れてしまうということが延々と繰り返されるまま30年以上の歳月が流れたわけです。

 

 それがたった一日(厳密には3時間あまり)で一気に更新されてしまったという衝撃。この日は日本スポーツ界のエポックメーキングが起きた日として歴史に大きく刻み込まれる…というところまでは望めないが、少なくとも自分の心の中では「ついにこの日が来たか」と感慨深い思いに浸ることが出来たのでとても嬉しかったのだ。

 

 まずはお昼過ぎ、井上尚弥VSジェイソン・モロニー戦。モロニーも前半から軽快な動きを見せ井上を揺さぶりにかかりますが、井上のスピードがそれをはるかに凌駕。ジャブで動きを止め強烈なボディを叩きこみモロニーの踏み込みをほぼ完全に封じ込めることに成功します。自分もリアルタイムで採点しておりましたが、5R終了時点で全て井上のラウンド。

 

 「このままだとモロニーのフルマーク負けになるが、何か打開策は無いのか?」

 

 そう思った6Rの立ち上がり、開始20秒ほどでモロニーがダウン。残り時間もたっぷり残っておりそのまま井上が一気に試合を終わらせることも可能でしたでしょうが冷静でしたね、とにかく慎重に隙を作らないまま逆転のチャンスすら与えません。そして7R、動きが完全に落ちたモロニーの左に対して右のショートを顎先に叩きこみ2度目のダウン。ダメージは大きく立ち上がる気配もなくなり審判もKOを宣告、見事難敵に完勝してタイトルの防衛に成功いたしました。

 

 古傷だの試合勘だのコンディション調整の難しさだの、微塵も感じさせない素晴らしい動きでした。特にフィニッシュブローの右のショートはこれまで一部で指摘されていた「接近戦における不安要素」に対する新兵器として練習を続けてきた跡が伺えます。タイミングといい芸術的なクオリティで、かつての絶対王者ウィラポンに引導を渡した長谷川穂積の右ストレートを彷彿とさせましたね。

 

 モロニーほどの実力者でも井上を止められない…それなら可能性があるとしたら、現状思い浮かぶのはWBOチャンピオンことジョン・リエル・カシメロもしくはWBA2番目のベルトを持つギジェルモ・リゴンドウあたりか?しかし試合後のインタビューで井上自身から語られた次戦候補は

 

「ウーバーリVSドネアの勝者」か「カシメロ」のどちらか

 

 このどちらかとしか語られなかった。つまりリゴンドウは全く顧みられていないということになる。そして井上は「ウーバーリVSドネアの勝者」の方を先に出してきた…ここぞというとき、得てして人間の「本音」というものは漏れ出してしまうものである。「ウーバーリVSドネア」であれば(個人ごとの見立ては異なるのが当然だが)自分はウーバーリ勝利が濃厚と見ているし、そのウーバーリはリゴンドウはおろかカシメロ相手でも非常に苦しいだろう。結果的に井上の次戦の対戦相手に「危ない」カシメロが指名されることは現段階においては、非常に可能性が低いというのが現実なのだろう。

 

 日本のボクシングだけ見ているとなかなかわかりにくいことだが「トップランク」と契約している井上の次の対戦相手を決めているのは誰か?もちろんマンガのように選手同士が挑戦して受けて…そんなことはあり得ません。ではジム会長の大橋さんは…日本国内なら大橋さんが中心で決めるのでしょうが、井上に関してはそれもありません、口幅ったい言い方をすれば大橋さんは「名義上のジム会長」でしかないのでしょう。実際の指導は親父さんが中心で、マッチメイクはトップランクが決める。大橋さんは蚊帳の外…気の毒な気がしないでもないですが、これもボクシングビジネスの「リアル」でもある。本人は「バンタム級4団体統一したい」旨の発言をしたらしいが、自分は何はともあれカシメロにやらせてあげて欲しい。でも、どうなっちまうんだろうなぁ~。

 

 方やアーモンドアイ。戦前の個人的な心配といえば「明確な逃げ馬不在がスローペースを生み出す可能性が高いこと」。ふたを開けてみればなんとダノンプレミアムがハナを切り、1000m通過が1分を超える立派なスローペースを演出することに成功する。しかし好位で道中を進めることに成功したアーモンドアイは直線半ばでダノンプレミアムを捕まえ先頭に立ち、後方から猛然と追い込んできたフィエールマンとクロノジェネシスを僅差で抑え込み優勝、G1競走8勝をモノにすることが出来た。

 

 上位に食い込んだ馬はみんな凄いですよ。スローでも何とか折り合いを維持して直線確実に伸びたし、フィエールマンやクロノジェネシスも道中不利は合ったものの凄い勢いで突っ込んできた。いずれにせよ大変な実力の持ち主であることはよくわかることが分かった。

 

 さてアーモンドアイの次戦は恐らく「香港カップ」が最後になるのだろう。「ジャパンカップ」で「3頭の3冠馬対決」も期待したいが、「使い分け」という関点ではやはり香港でしょう。

 

 話は全く変わるが今日は4年に1度の世界的大レース「アメリカ大統領選挙」である。世界に多大な影響をもたらす一戦であるが、事前調査によるとバイデン候補優勢州が多いとはいえトランプ逆転の目もしっかり残っている。日本の首長選と同じく現職が基本的に強い選挙なだけに、結果的にはなんだかんだでトランプが勝つような気がするんだけどな。ネガティブ要素満載なのは今に始まったことじゃないし、本当にアメリカ国民の大多数から嫌われているのならば4年前にも勝てていなかっただろうし。

 

 さてさて、今後の世界情勢はどうなることやら…Our future is uneasyってな。

 

 かしこ。