「馬の気持ちなんてわかるわけないじゃないですか!だって馬ですよ?」…2020年凱旋門賞が終わりました。

 2020年の凱旋門賞は昨年の仏ダービー馬・凱旋門賞3着だったソットサス(牡4歳)に軍配が上がりました。騎手は日本でもお馴染みクリスチャン・デムーロ。クビ差の2着に今年の独ダービー馬インスウープ(牡3歳)、3着はマイルを中心に戦ってきたペルシアンキング(牡4歳)。上位5頭まで地元フランス勢が占めるという、いわゆる「地の利」が活きた結果ということになるのでしょうか。

 

 戦前の評価としては「稀代の名牝」エネイブルと「稀代のステイヤーストラディバリウス、この6歳馬が1,2番人気を受ける形となったわけですが、それぞれ6,7着に敗れました。過去98回の開催で6歳以上の馬が優勝したのは1932年のたった1回しかない、とにかく高齢馬に厳しいレースということは歴史が証明済み。陣営もそのことは当然承知していたでしょうが、それでもチャレンジしてくれたこと自体素晴らしいことだったと思います(8着に敗れはしたものの、ディアドラも同じくね)。

 

 レース自体は馬場状態が日本における「不良」、かつ走破タイムが2:39.3という歴史的な遅さ。これ日本の芝だと2600mの数字ですからね、やはり日本競馬とは色々な意味で「別世界」なんだなと実感させられますね。

 

 レース映像に表示された通過タイムによると

1400m⇒1:36.14 1800m⇒2:01.89

2000m⇒2:14.89 2200m⇒2:26.83

 

 ラスト600mは37.41秒かかっていたことになりますが、馬場や展開を考えれば完全な瞬発力勝負。マイラーと思われるペルシアンキングが逃げての3着に踏みとどまれたのも、自身のマイラーとしての切れ味を発揮できる展開に持ち込めたことは大きいでしょう。自分の力を活かせる展開を自力で作り出せる、逃げ馬のメリットですね。

 

 改めてレース映像を見返すと、勝ち馬の位置取りはペルシアンキングの真後ろ、2着はその真後ろ。共に道中は内ラチ沿いを守り続けてロスを極力減らす「凱旋門賞を戦う上で」実に理想的な競馬をしています。かたやエネイブルは大変でしたね、スタートで少し遅れて内を取り切れず四方を完全に取り囲まれ、実質何も出来ないまま直線を迎えてしまいました。スローペースも不良馬場も決して得意というわけではない馬なので、あれでは持ちこたえられなくても仕方がないでしょう。それでも最後の最後まで頑張って踏みとどまろうとしていたのは流石、やっぱり凄い馬だなと思いました。

 

 ストラディバリウスは「自分が勝つためにはエネイブルを沈めるしかない」から、あの戦い方を選択したということになるのかな?それはそれで間違いではないはずですが、いくら何でも道中外を回り続けるのはロスが大きすぎです。まぁ隊列が固まってから内に進路を求めるために動くのは無謀でしかないからあの場合仕方がないっちゃないですけど、馬券買ってた方にとっては納得しきれないかもしれませんね。

 

 ディアドラは表現は悪いですけど「日本馬が凱旋門賞で惨敗する典型」のレースでしたね。スタートに失敗して道中は最後方、直線で進路を探す間にも勝負は前の馬たちで決まってしまい、最後は脚の上がった数頭を交わしたところでゴールイン。勝ち負けに参加することすら出来ないというレベルでの惨敗。これを今まで何度見せつけられたことやら…

 でも仕方がないんですこれは。いくら海外経験豊富なディアドラといえフランスはこれが初レースだったんですから。騎手もなかなか決まらなかったり、とにかく準備段階から難しいことが多すぎました。「日本馬の長期海外遠征」という馬主さんにとってはメリットがほとんどないチャレンジを2年近くも続けてくれたこと、それを無事に走り切ってくれたこと。成績を云々する前に、まずはそれを讃えないとね。でもこの先どうするんだろう?

 

 今年のレースに関してはきりがないので終わりにしましょう。「凱旋門賞」それ自体に関しては昔色々と考えてみたけど、この度折角ブログという場所を立ち上げたわけだから気が向いたら改めて書いてみましょうかね。

 

 かしこ。